エリート専務の献身愛
「また会ったね」
「今朝の……!」

 笑顔で私を見つめている人は、今朝たまたま遭遇して助けてくれた彼だった。

 なぜ、こんなところに? 一日に同じ人に二度も偶然出会うなんてある?

 茫然としている私とは違って、彼はそこまで吃驚した顔もせずに病院を見上げた。

「こんな大きな病院担当しているんだね」

 目を細めて夕陽が反射する窓ガラスを見回し、ゆっくり顔を戻すのを黙って見る。
 私と再び視線がぶつかった時に、彼は上品に笑った。

「ああ。そこを通りがかっていたら、キミが謝っている姿を見つけて」

 余程、不思議そうな顔をしていたのだろう。
 私の疑問に答えるように説明してくれたことで、自分はわかりやすいんだなとさらに反省した。

「お、お恥ずかしいところばかり……どうもすみません」
「いや、べつに。僕は謝られることされてないよ」

 私が深々頭を下げると、彼は可笑しそうに笑う。
そして、ポケットに手を入れながら、世間話をするように聞いてきた。

「仕事は大変?」

 よくある話題提供のひとつだ。
 そう頭ではわかっているのに、うまく笑えていない気がして目を伏せた。

「こういう大きなところでは先生方皆さんお忙しくて、話を聞いてもらうだけで精いっぱいだし、なかなか……。唯一、笑顔で待っていてくれる人がいて、気持ちが救われているんです」

 瑛太くんを思いだした時だけ、自然に笑みが浮かんだ。
 けれど、次の瞬間ハッとした。

 私、なにを余計なことまで!
 相手も差し障りない返しだけを求めているんだから、わざわざ瑛太くんのことを言わなくてもよかったのに。

 まともに聞いてくれる相手もいないせいかな……。

「へえ。綺麗だし、やっぱりモテるんだ」
「そんなんじゃないですよ! それに、綺麗でもないので」
「そう? 言われないの? 特にキミの目は澄んでいて魅力的だと思うのに」
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