エリート専務の献身愛
 上半身を屈めて顔を近づけられると、私なんかよりもずっと綺麗な瞳を持つ彼に恥ずかしさが募る。

 大体、魅力的な目っていうのは、例えばさっきすれ違った女性のような目を言うんじゃないかな……。

 私はパッと横を向き、「いえ」と否定的な言葉で会話を濁した。
 彼が姿勢を戻したのを視界の隅で確認して、ホッと胸を撫で下ろす。

 こんなにカッコイイ人と話なんかしたことないし、まして、そんな人に『綺麗』とか言われるなんて想像もしてないし。

 『鵜呑みにするな』『舞い上がるな』と戒め、きゅっと唇を引き結ぶ。

「ところで、今日はもうこの時間なら仕事は終わり?」

 彼は腕時計を見ながらそう言った。

「あ、いえ。外回りはここで終わりですけれど、社に戻ってから仕事はまだあります」
「毎日? キミだけ?」
「え? まあ、大体……私だけじゃない時もありますし」

 不思議そうに首を傾げる姿に、こっちまで同じ行動を取ってしまいそうになる。

 ごく普通の返答だったと思うんだけれど……。
この人もスーツなんだし、外にいるってことは営業とかじゃないのかな? あ、でもよく見たら手ぶら。

 思わず観察するように彼を見て、一体どういう職種の人なのかと考える。

 スーツはピンとしているし、さっき何気なく見ていたけれど、腕時計も高級そう。
時間を確認していた時に覗いて見えたワイシャツの袖口とかも、パリッとしていて清潔感がある。
革靴も磨かれたように綺麗で、外見的には全く非の打ち所がない。

 だけど、平日の夕方にスーツ姿で手ぶら……。
 なんだろう。まったく予想できない。

「うーん、そっか……。じゃあ、今日は急だしダメかな」
「はい?」

 腕を組んで唸るように首を傾けて言うことに、きょとんとして聞き返す。
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