エリート専務の献身愛
 部長の件も白だったら……。本音では思っていたから。

 事実だとはっきり聞かされて、希望の光が消えた気がした。
 暗い顔をして固まる。レナさんの視線を感じたけれど、向き合う余裕もない。

 すると、さっきとは違ってややきつい口調で窘められる。

「勘違いしないで。会社都合のレイオフやリストラという理由ではないわ。彼自身に問題があったからよ」
「も、問題? どういう意味ですか?」

 レナさんが話すことは、さっきから私を翻弄してばかり。
 今度も、全然予想もつかないことを言うから、落ち込んでいる時間もない。

 私がジッと視線を向けると、珍しくレナさんが顔を逸らした。そして、ぽつりと漏らす。

「ウチの今開発中の新薬情報を他社に流そうとしていたから」
「そ、それは、故意に情報漏洩しようとしていたってこと……? まさか、あの部長がそんなことをするわけ……」
「どのIDでどんな操作していたかなんて、総にかかればすぐわかること。なにより、本人が認めたから退職することになったんじゃない」

 私の異論にレナさんはぴしゃりと言い捨てる。
 確かに、浅見さんの正確な立場を知った手前、納得せざるを得ない。

「どうしてそんなことを」

 もしかしたら、部長の意思じゃなくて誰かに脅されてやったとか? って、なんで部長が脅されるようなことがあるのよ!
 やっぱり全然わからない。

「まぁ、色々と事情はあったみたいだけどね。彼の同期でもある開発本部長を犯人に仕立て上げて蹴落としたかったというところかしら。過去に、その本部長は彼を裏切って、仕事の手柄を横取りして昇進したみたいだし」
「嘘……」

 開発本部長を? 裏切るっていったい……。

 部長が開発本部長と同期っていうことも初耳だった。怨恨を抱えていることだって気づきもしない。私だけじゃない。ほかの社員だって、絶対知らないよ。噂にもなってなかったもの。

「まぁ、そういうこと。……ただ、本来なら、事実を晒されて解雇。もしかしたら起訴でもされるかもしれないところを、直前で、未遂だし罪悪感を抱えていたのを察して依願退職扱いにした」

 それは……。
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