エリート専務の献身愛
「浅見さん、が……?」

 声が震える。

「ほかに誰もいないでしょ。本社にはそこまでの報告していないもの」

 彼は、やっぱり彼だ――。

 私が思うような、優しくて、すごく強い人。

 きっと、口で言うほど簡単なことじゃなかったはず。自分の立場もあるはずだ。
 それでも、危険を冒してでも、部長のことを考えてくれていたなんて。

「本来の目的は社内インフラ改革なのよ? それを、ついでにって軽く上が命令してきて調査したらこれだもの。余計な仕事だったのよ。それなのに、総は穏便に済ませるために色々と……」

 忙しい、と。誰かに裏切られたらどうするか、と悩んでいたのはこういうことだったんだ。
 本来の仕事もあるのに、他人のことを考えて……。

「それもこれも、あなたのため」
「え?」
「鈍感ね! あなたが信頼を寄せてる上司だったから、総はできるだけ大事にしないように、あなたが傷つかない方法を考えて、先回りして対処したんじゃない」

 私の、ため……?

 裏切られたら、という話は、私が浅見さんにということじゃなくて、私が部長に裏切られたらどう思うかっていうことだったの?

「それじゃ」

 呆然とする私を置いて、レナさんはカウンターにお金を置いて立ち上がる。

「あっ、あの!」

 オシャレなバーなのに、ガタッと音を立て、不恰好にもよろけて椅子から降りる。

「どうして、わざわざ私にそのことを」
「……私情を挟んで、総の正体とか、色々口を滑らせてしまったから。そのお詫びよ」

 レナさんは襟足から手を入れ、髪を靡かせる。瞼を伏せ、少し間を置いて、赤い唇を小さく開いた。

「彼があんなに落ち込むのを見るのは、今までになかったから……」

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