エリート専務の献身愛

 夢を見た。

 それは、まだ自分が幼かった頃の記憶。

 あるときのテストが、クラスの中で一番を取ることができた。満点ではなかったけれど、〝一番〟に頬が緩む私。自分なりに頑張った成果だと喜んで。

 寝る時間を過ぎてもまだ起きていたのは、それをお父さんに見せたかったから。
 でも、帰ってきたお父さんからは、想像していたような態度も言葉もなかった。

 部屋でひとり、声を押し殺してなく私の頭に、誰かの手が置かれる。

 大きくて、優しくて、温かい。

 ゆっくり顔を上げると、見下ろしているのは……。



 夢のせいか、あまりすっきりしない朝を迎えた。
 いや、夢が原因じゃないか。理由は早く浅見さんに会いたかったから。そのせいで眠りも浅かったんだろう。

 油断すると、気持ちが今日の夜に向かってしまいそうだったのを堪え、仕事をひとつひとつ丁寧にこなした。
 新しい採用の話など大きな成果はなかったものの、訪問先との関係はよくなってきていると思う。

 日課の報告書を作成し、デスクを整頓して席を立ったのは午後八時前。

「お先に失礼します!」

 数名残っている社員に挨拶をし、会社を飛び出した。

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