エリート専務の献身愛
「あ、浅見さん。私、お断りしたはずですよね?」

 こういう性格がダメだってことはわかってはいる。
……いるんだけれど、やっぱり誰かに断るということは極力したくない。

 でも、仕事にしてもプライベートでも、できないことや不確かなことに『できる』とは言ってはいけないと考えている。
 だから、これで合っているはず。

 義理と建前に囚われている私は、それが本当に自分の本心なのかもわからない。
 そのせいか、浅見さんのように目を見て伝えることはできなかった。

「そうだけど、瑠依は来てくれたよ」

 浅見さんは終始落ち着いているのに、私は狼狽えるばかりだ。

「それはっ……! 昨日、絆創膏ももらったし、道に迷っているって聞いちゃったら放っておけなくて……」

 よりによって、予定がなくなったから、あのまま無視していても一日中気にして過ごしちゃうと思ったし。
 そこまで遠い場所でもなかったし、すごく詳しいとまではいかないけれど、渋谷なら少しは役に立てるかと思ったからで……。

 視線を泳がせながら、心の中で言い訳を並べる。
 すると、浅見さんがくすっと笑った。

「瑠依はやっぱり優しいね」

 やっぱり……?

 私は一瞬首を捻ったけれど、次に言われた言葉でそんな疑問も忘れ去る。

「実は、タクシーもあるし、ホテルに帰ることはできた」
「あっ」

 そう言われればそうだよ! 海外から来たって言ったって、日本語はこんなに上手なわけだし、最終手段でタクシーや交番があったじゃない!

 どうしてこう、視野を広く考えられないんだろう。
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