エリート専務の献身愛
「あー、そうそう。混んでるかなー。俺、朝飯食ってないから、あんま待ちたくないんだけどなー。ったく、篤矢のやつがドタキャンなんてするから」
そこにいるのは、紛れもなく由人くんだ。
今朝、出掛けた時と同じ服装で。最近見ることなくなった笑顔で、見知らぬ子と並んでいる。
「だけど、ひとりじゃなく、あたしもいたからいいじゃない! あれ? そういえば彼女の家から来たんじゃないの? ご飯作ってくれない人?」
「まーいっつも仕事ばっかりしてるかな。俺がいる時、これ見よがしにパソコン開いたりしてさ。仕事と付き合えばって感じ」
無意識に爪を手のひらに食い込ませ、歯を食いしばっていた。
なんで、こんなに人で溢れているのに。
どうして、喧騒な街中でふたりの声が鮮明に聞こえてくるの。
「ふーん。あたしだったら、そんなに仕事ばっかりしないで、彼氏優先にしちゃうけどなぁ。すごいんだねー、由人の彼女」
その子が険のある言い方をしたから、『すごいんだね』が素直に聞けない。
確かに、彼氏を疎かにしていた私が不器用なんだろう。
けれど、そんなふうに陰で嫌味を言われるほどのことなの? そんなに私は、〝できない〟人間なの……?
「あー、すごいんじゃない? 弱音のひとつも聞いたことないし」
由人くんの言葉で、ぷつんとなにかが切れた。
通行人を縫うように歩き進め、由人くんの前に辿り着く。
「……瑠っ」
「私だって……! 苦しいよ、平気なんかじゃないよ! 頑張ってるんだよ!」
由人くんは私の姿を見るなり驚倒する。
それはそうだ。ウエイクボードに行くって言っておいて、こんな街中に女の子と一緒にいるところに遭遇したのだから。
隣の彼女は、察しがいいようで、私が彼女だとわかって由人くんの後ろに隠れた。
だけど、私にとってはもうそんなことはどうでもいい。
横にいる彼女が誰で、どんな関係なのかとか、なんで渋谷にいるのかとか。
それよりもずっと、私のことをこれっぽっちも見てくれていなかったことが悔しい。
それと同じくらい、陳腐な反論しかできない自分が不甲斐ない。
弱音のひとつもうまく吐けなかった自分が……。
そこにいるのは、紛れもなく由人くんだ。
今朝、出掛けた時と同じ服装で。最近見ることなくなった笑顔で、見知らぬ子と並んでいる。
「だけど、ひとりじゃなく、あたしもいたからいいじゃない! あれ? そういえば彼女の家から来たんじゃないの? ご飯作ってくれない人?」
「まーいっつも仕事ばっかりしてるかな。俺がいる時、これ見よがしにパソコン開いたりしてさ。仕事と付き合えばって感じ」
無意識に爪を手のひらに食い込ませ、歯を食いしばっていた。
なんで、こんなに人で溢れているのに。
どうして、喧騒な街中でふたりの声が鮮明に聞こえてくるの。
「ふーん。あたしだったら、そんなに仕事ばっかりしないで、彼氏優先にしちゃうけどなぁ。すごいんだねー、由人の彼女」
その子が険のある言い方をしたから、『すごいんだね』が素直に聞けない。
確かに、彼氏を疎かにしていた私が不器用なんだろう。
けれど、そんなふうに陰で嫌味を言われるほどのことなの? そんなに私は、〝できない〟人間なの……?
「あー、すごいんじゃない? 弱音のひとつも聞いたことないし」
由人くんの言葉で、ぷつんとなにかが切れた。
通行人を縫うように歩き進め、由人くんの前に辿り着く。
「……瑠っ」
「私だって……! 苦しいよ、平気なんかじゃないよ! 頑張ってるんだよ!」
由人くんは私の姿を見るなり驚倒する。
それはそうだ。ウエイクボードに行くって言っておいて、こんな街中に女の子と一緒にいるところに遭遇したのだから。
隣の彼女は、察しがいいようで、私が彼女だとわかって由人くんの後ろに隠れた。
だけど、私にとってはもうそんなことはどうでもいい。
横にいる彼女が誰で、どんな関係なのかとか、なんで渋谷にいるのかとか。
それよりもずっと、私のことをこれっぽっちも見てくれていなかったことが悔しい。
それと同じくらい、陳腐な反論しかできない自分が不甲斐ない。
弱音のひとつもうまく吐けなかった自分が……。