エリート専務の献身愛
それから、通常通り、資料や提出書類を作成していた。時計を見れば、短針は九を指している。集中しすぎて、いつもよりも遅くまで残ってしまっていた。
だけど、どうせ予定があるわけでもない。あと少しでキリがいいところまでいくから、やってしまおう。家に持ち帰っても、途端に電池が切れて仕事なんかできないだろうし。
ラストスパートの前にちょっと休憩を挟もうと、両手を上にあげ、グッと伸びをする。
もう少し頑張ろうとは思っても、お腹は空いたな。コーヒーでも買ってきて空腹を凌ごう。
私は財布を手に取り、廊下の自動販売機に向かう。
休憩スペースまで五十メートルを切ったところで、話し声が聞こえてきて無意識に気配を消した。
というのも、その話し声がどうも内緒話のように感じたからだ。
足音が鳴らないようにそっと近づいていくと、やっぱり秘密めいた会話が耳に入ってきた。
「ちょっと小耳に挟んだんだけどさ……」
不思議とひそひそ話というのは、耳に届きやすい気がする。
どうやら、他部署の男性社員のようだ。
私は、つい足を止めて話の先を盗み聞きしてしまう。
「うちの支社に、本社の人間が潜り込んでいるらしい」
「は? 潜り込むって、なんでまた……」
「先輩の同期が、上の人間の話を聞いたらしくて。それがさ、レイオフじゃないかって話」
「レイオフ!?」
「しっ! 声が大きいって!」