エリート専務の献身愛
「人に寄り掛かったら、少しは休まらない?」

 その言葉に、これはボランティア的な気持ちでしてくれているのだと思った。

 だって、やっぱりおかしいもの。彼ほどの人にとって、私なんかが特別であるはずがない。

 きっと、浅見さんは上に立つ人なだけに、視野が広くてこんななにもない私でも目に留まってしまったんだろう。
 珍しいのは、立派な肩書きの人なのに怖い雰囲気もなく、むしろすごく親しみやすいということ。

 そうは言っても、相手が完璧な人なだけに、私の心は緊張して休まるどころかバクバク騒ぎ続けたままだ。幸いなのは、彼の顔が見えないこと。

 私は奮える声をどうにかごまかして、小さく呟いた。

「……いつも、余裕があるんですね。羨ましいです」

 この間も、今日も。この人だって、仕事柄疲れる立場のはずなのに。しかも、慣れない環境下にいるのに、慌てた顔を見たことだってない。

 浅見さんの胸で考えていると、頭上に声がぽつりと落ちてきた。

「見せかけだけさ」
「え?」
「……いや。そんなことないよ。今だって余裕なんか本当はない」


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