エリート専務の献身愛
浅見さんは私を送って行けないことを嘆きながら、まだ仕事が残っているとかであの後すぐに別れた。
自宅について、重いカバンを置き、ラグの上に腰を下ろす。
あのまま帰ってきていたら、冷静さを欠いたまま、それでもなにかしなくちゃ落ち着かなくて朝までパソコンを開いていたかもしれない。
そうなっていないのは、明らかに彼のおかげだ。
「お腹空いた……」
ひとりきりの部屋でぽつりと漏らし、カサッとコンビニの袋を覗き込む。
言っていた通り、入っていたのは天むすと味噌焼きおにぎり。それと……。
「玉露?」
少量のペットボトルを手に取り、思わず笑ってしまった。
浅見さんって、好みが渋いっていうかなんていうか。ブラックコーヒーにサンドイッチとかが似合いそうな人なのに。
蕎麦が好きだったり、焼き鳥屋さんを選んだり。
このおにぎりも、本当は食べてみたかったんだろうな。
ローテーブルにおにぎりとお茶を並べ、眺めながら思う。
「味噌焼きおにぎりは宮城県なんだ」
フィルムをぺリペリと剥がし、ひとくち頬張った。
「あ。あっためるの忘れた」
あまりに空腹で、なにも考えずに開けてしまった。
このままでも美味しいけれど……天むすは温めよう。
行儀悪いとはわかっていながら、焼きおにぎりを口に入れながらレンジに向かう。スイッチを押し、温められている天むすを眺めながらボーッとしていた。
パッケージに書かれている言葉を何気なく読み上げる。
「地域限定……か。地域……。故郷の……味」
ふと、頭に過ったことを続けて呟いた瞬間、ハッとする。
浅見さんがさっき言っていた。『ぜんぶ捨ててしまえばいい』と。
こうなってしまったら、一か八か。やってみるしかない。
思いついたアイデアを頭の中で思い描く。私は天むすをほっといて、パソコンを開いた。
不安に押しつぶされそうなのをどうにか堪え、レンジの音も無視してひたすら仕事に専念した。