エリート専務の献身愛

 夜討ち朝駆けで病院を訪ね、週末まで慌ただしく過ごす。
 休日のはずの日曜だけど、明日に控えた説明会の資料や原稿を何度も確認しては直しを繰り返していた。

 できることはやった。あとは、当日うまくいくことを祈るのみ。

 口元を引き結び、原稿を見つめる。
 そこにインターホンが鳴って、立ち上がった。

「あっ……さみさん!」

 玄関を開けるなり、驚いて大きな声を出してしまった。

「ど、どうして?」

 まあ、うちの場所は前にタクシーで送ってもらったときに知ったのはわかるんだけれど、なぜスーツ姿なのにここに来てくれたのかが疑問だ。

 スーツってことは、仕事だよね? 電話もあるのにわざわざ足を運ぶなんて、なにがあったんだろう。

 すると、浅見さんは紙袋を見せながら笑った。

「いや、この間のこと気になってて。なんとなく今日も仕事してるのかなって。で、一緒にどうかなって、ちょっとだけ差し入れ」
「差し入れ、って。浅見さんもお仕事中なんですよね?」
「まぁそんなところ。でも、今は相棒に任せてちょっとだけ休憩中」
「そうなんですか。あ、じゃあ、少しあがっていきますか?」

 さりげなく言ったつもりだけれど、実際はかなり緊張している。

 だって、『一緒に』って今言っていたし、休憩中なら移動している時間もないかもしれないし……と、言い訳を並べて、家に誘ったことを正当化する。

「いいの? じゃ、少しだけ」

 浅見さんは一瞬驚いた顔を見せたあと、あっさりとそう言った。うちの狭い玄関に足を踏み入れ、私との距離がグンと近くなっても、大きな動揺ひとつ見られない。

 こんなに感情が乱されているのは私だけ。
 だから、変な期待なんかしない。平常心で、ただ一緒に持ってきてくれたものを頂こう。


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