エリート専務の献身愛

 翌日は、気持ちのいい青空だった。
 午前中のスケジュールをこなしている間も、この後控えている説明会で頭がいっぱいだった。

 たかが十五分程度の説明会。でも、この十五分が大事だ。
 借りた会議室で深呼吸を繰り返し、何度もイメージを繰り返す。

 時間だ。

 時計を見て十分前を確認すると、席を立って廊下に出る。パラパラと会議室に人が集まってきて、十分後には用意した二十席がほぼ埋まった。

 最前列には笹川先生。机の上には私が用意した資料、ボールペン、そしてお弁当が置かれている。
 笹川先生の反応に緊張が高まりつつ、平常心を心掛けて説明会を開始した。

「本日は、お忙しいなかお集まりいただきまして、ありがとうございます」

 まずは定番の挨拶。限られた時間だから、さくっと本題に入る。

「では、医薬品Aよりも医薬品B、というのはなぜか、説明させていただきます」

 すると、ちらほらとお弁当を開いて食べ始める人がいた。ふと、笹川先生を見ると、お弁当をちょうど開けるところ。そのまま先生の顔色を窺うと、驚いた目をしたあとすぐに、小さなため息をつかれてしまった。

 チラリと向けられた視線が痛い。でも、まだ終わっていない。頑張るのはここからだ。

「従来のAと新しいBは副作用の例など、確かに似ている部分が多く、大して変わらないのではないかと思われるかもしれません。しかし、資料にあるデータ見ていただければ違いがわかるかと思います」

 できるだけ興味をそそる言い回しで、簡潔に。動揺を表に出してしまったら負け。

 私は、緊張している本心に逆らって、満面の笑みを向ける。
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