人事部の女神さまの憂いは続く

「あの、これよかったら召し上がってください。
 以前、プライベートなことで弊社の藤木通して真人さんにもご迷惑おかけしてしまったので。その節は、本当にありがとうございました」

頭を下げながらそう言っても、ぽかーんとしている波木社長から反応はかえってこない。

「あ、これ、お酒のオツマミなんです。漬け込んでるお豆腐で、日本酒にもワインにもあうので。お酒飲まれるなら、と思ったんですが」

焦って言葉を追加していると

「ほんとに、卒がないねー。俺、すごい好きだけど、あいつは違うだろー」

びっくりしたのかさっきまでとは全然違う、素のような発言が返ってきた。

今度はこっちがあっけにとられていると

「うん。ニシユリちゃん、まじで気に入った。今日はこれからが本番だから、行くよ」

と言って、ようやく差し出していた紙袋を受け取ってくれたかと思うと、その手をぎゅっと掴まれて、来た時と同じようにお店の前に止まっていたタクシーに引き込まれた。

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