人事部の女神さまの憂いは続く
「いえいえ、大事にしてるなんて。あの時、困ってたので助けていただいただけなんですよ」
あくまで藤木さんの部下というスタンスを崩さずに、そう返すけど、内心藤木さんに文句を言いたくなってしまう。
結婚してるって言ってくれてたら、こういうしょうもない相手しなくても済んだのにって。
「そうなのー?まぁ、じきにわかるか。でも、俺ほんと、ゆりちゃんみたいな子タイプ」
そう言いながら手をギュッと握ってくる。やんわりと、その手をひっぺがして、にっこりと微笑むと
「うーん、チューして欲しいの?」
よくわかんない言葉が飛んでくる。この人、どういう思考回路してるんだろうと固まっていると
「ゆりちゃんのお願いなら仕方ないね」
顔が近づいてくる。これまで対応したことのないチャラさ加減に戸惑うものの、とりあえず何とか回避しないとと
「真人さん、どこ向かってるんですか?」
波木社長の顔の反対側にある窓に目を向けて、そう問いかけると、くくっと笑って
「ついてからのお楽しみ。チューも、後のお楽しみにとっとこうかな」
なんて言って髪に手を伸ばしてくる。