人事部の女神さまの憂いは続く

「あ、真人さん、待ってましたよ」

そう言って藤木さんが座っている横の席に誘導しようとしているスーツの男性。

「キレイなひと連れてますね。紹介してくださいよ」

また別のどこかで見たことのあるような男性が声をかけてくる。

「いいだろ。今、俺が絶賛口説き中のゆりちゃん」

そう言って手が離されたかと思うと腰をぐっと抱かれる。本当なら、その腕を思いっきり払いたいところだけど、今私は怒っているのだ。

だから藤木さんにしなだれかかっている美女のように、波木社長に身体を傾けて、はじめまして、とみなさんに軽く会釈をした後に

「副社長、こんなところでお会いするなんて奇遇ですね」

にっこりと最上級の笑顔をつくってやった。

私が入ってきた時には、びっくりした顔をしていた癖に、途端に目を泳がせて隣の女の人から距離をとろうとしている。

今更とってつけたような反応に、余計にイラッとしていると

「ゆりちゃん、ほら座ろう」

波木社長に促されてソファーに腰を下ろした。
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