人事部の女神さまの憂いは続く

そんな大人な俺の対応のお陰で、食事中は車の中でのケンカなんてすっかり忘れたように侑里はご機嫌で。

あぁ、連れてきてよかったなって思う。

「俺、温泉とかほとんど来たことなかったけど、いいなー」

しみじみ呟いた俺のことばへの返しを聞いて、侑里の魂胆が分かった。

「私、温泉好きだから結構来ますよ。一緒に露天風呂とか入ると、いつもと違った感じでいいですよねー」

ニコニコ顔でそういう侑里を思いっきりにらみそうになった自分を落ち着かせる。

こいつ、わざと俺を怒らせようとしてるな?

きっと車の中での俺の失言の仕返しのつもりだろう。そういうつもりなんだったら、わざわざそんな軽い挑発になんてのってやらない。

ここは大人の男として、さらっとかわしてやるんだ。

「そっか。じゃあ、後で一緒に入ろうよ」

余裕を見せてそう言ってみたのに

「考えときます」

なんてかわいくない返事がかえって来る。
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