好きになれとは言ってない
 




 こいつ、いつもこんな道歩いて帰ってんのか。

 街灯少なくないか? とついつい、余計なチェックをしながら、航は夜道を歩く。

 テレビで、女性が、すぐに110番通報できるように、携帯を握って歩いてるとか聞いたとき、やりすぎだろと思ったのだが、今は、遥の手を見て、なんで携帯をつかんでないんだ、と思ってしまった。

 ……待てよ。
 携帯?

 そういえば、真尋の奴、遥の携帯の番号、自分だけが聞いて、俺に教えてなくないか?

「遥」
と呼びかけたが、

「え、はい?」
と間近に見上げられ、つい、

「……いや、なんでもない」
と言ってしまう。

 いざとなると、聞きづらい。

 コンパの打ち合わせもあるし、訊いてもおかしくはないはずだが、と思いながらも、うまく言葉に出せなかった。

「コ、コンパ……」
とだけ無理やり言葉を押し出したあと、此処で切ったら、変な人だな、と気づく。

 だが、そこで、遥が勝手にしゃべり出した。

「そうですよ、コンパ」

 こら、黙れ、と思った。

 お前、またなにか、全然違う話に持っていこうとしてるだろ~っ、と思ったら、案の定だった。
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