好きになれとは言ってない
「そうね。
 隆弘さん待ってるから、じゃあ、お父さん送って」

 にやりと笑って遥の姉は言い、
「それじゃ、失礼しまーすー」
と大きな七人乗り車に乗って去っていってしまった。

「遥」
と航は小声で遥を呼ぶ。

「俺は自力で帰るからとお父さんに言ってくれ」
と言ったのだが、遥は、

「え?
 でも、もうお父さん、車出す準備してますよ」
と取り合ってくれない。

 察しろ、莫迦っ。
 お前、俺の母親と二人きりで車に乗りたいかっ、と思ったが、こいつ、意外と動じそうにないな、とも思う。

 まあ、別に俺と付き合っているわけでもないから、関係ないといえば、ないのだが。

 いや、そうだ。

 俺も遥の父親と二人きりになったからと言って、関係ない……

 関係ないはずだ……。

 そう思いながらも、遥の腕をつかんでいた。

「お前、ついて来てくれるんだよなっ?」

 ええっ? と遥が言い、会話が聞こえているわけでもないだろうに、遥の母親が玄関先で笑っていた。







< 112 / 479 >

この作品をシェア

pagetop