好きになれとは言ってない
結局、遥に同乗してもらい、車で送ってもらったのだが、その間、遥の父親はまったくしゃべらず、一緒に後部座席に乗っている遥がひとりで阿呆な話をしていた。
助かると言えば、助かるが、コンパの話とか今するなよ、と航は思う。
ちらと窺い見たが、遥の父親は、特に表情も変えてはいなかった。
「あ、此処でいいです」
と大きな道の止めやすい場所で言ったのだが、遥は家まで送っていくと言う。
結局、アパートの前に止めてもらった。
失敗したなー、と何故か思っていた。
ちょっと離れたワンルームマンションを借りるか、駅に近い普通のアパートを借りるか悩んで、駅に近い方を選んだのだが。
ちょっと遠くても、見栄えのいいマンションにしておけばよかった、なんとなく……。
そんなことを思いながら、
「ありがとうございました」
と車を降りて、遥の父に頭を下げる。
「それじゃ、失礼しまーす」
と窓から覗いて言う遥に、
「お前、後ろに乗ったままか。
乗り換えないのか。
父親に運転させて、後ろにふんぞり返ってるとか、王様か」
とつい、いつもの調子で言ってしまい、しまった、と思ったのだが、そこだけ、遥の父が笑ってくれたので、ちょっとほっとしていた。