好きになれとは言ってない
 



 駅からの道も航と二人で、しょうもないトナカイの話を続けながら歩く。

「だから、クリスマスのイベント、十一月の頭でもいいんですよー。

 ホテルとか十一月からクリスマス仕様になってるところもありますよ」

「……誰と行ったんだ、ホテル」

 そう唐突に訊かれ、
「え? ああ。
 去年行ったんですよ、十一月に。

 おばあちゃんと従姉妹の子のまさくんとー」
と答えていたのだが、途中から航は明らかに聞いていなかった。

「……あの、訊いておいて、興味ない顔するの、やめてくれませんか?」

 などと話しているうちに、あっという間に会社に着いた。

 エントランスに続く階段に足をかけたとき、ふいに後ろから航が呼びかけてきた。

「遥」

 はい? と振り返ったが、何故か足を止めている航はなにも言わない。

 なんだろうな、とその顔を見つめていると、
「電話番号」
と言ってきた。

「電話番号がどうかしましたか?」
とちょっと警戒しながら訊いてみる。
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