好きになれとは言ってない
「面妖なものを見たわ」
朝、給湯室で、亜紀が言ってきた。
「は? なんですか?」
と遥は健康茶の袋を手に振り返る。
朝だけは関連会社が作っている健康茶を全員分淹れることになっているので、同じ給湯室を使っている他の部署の人たちと一緒に、それを煮出していたのだ。
「あんた、朝、新海課長に携帯の番号訊かれてなかった?」
「……訊かれましたけど?」
「なんで今頃教えてんの?
付き合ってるのよね? あんたたち」
と確認するように言ってくる。
「いえ、そのような事実はありませんが」
「だって、今朝も一緒来たじゃない」
「たまたま一緒になったんですよ」
「あんたいつも遅刻ギリギリなのに、なんであんなに早く来たのよ。
課長と一緒に来たからじゃないの?」
「ええっ?
遥さん、課長とお泊まりだったんですかーっ?」
と給湯室の入り口から、優樹菜が言ってくる。