好きになれとは言ってない
 真尋が顔をしかめて言った。

「おにーちゃん、今、タダでいいって言わなかったかな?」

「幾らだ」

「本当に人の話を聞かない人だよね。

 っていうか、いい加減、値段覚えてよ。
 これしか頼まないくせに。

 650円になりますー。

 遥ちゃんは今日のは奢り。
 今度、友だちでも連れてきて、店の宣伝してくれたらいいから。

 女の子の口コミってすごいからね」

「あ、でも……」

「はい。
 ごちゃごちゃ言わないで。

 もうレジ閉めたからね」

 はいっ、と650円レジに放り込んだだけで、そう言う。

「あ、ありがとうございます。
 ばっちり宣伝しておきますっ」

「ありがとう」
と微笑んだ真尋は、

「店の雰囲気を壊さない落ち着いた感じの美人を中心に宣伝しておいて」
と無茶を言う。

「まあ、またおいでよ。
 兄貴は居なくてもいいから」
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