好きになれとは言ってない
「いや、今、お前を連れてきたことを猛烈に後悔しているところだ」

 ええっ。
 なんでですかっ、と思っていると、航はやはり前を見たまま言う。

「お前とはいえ、女性社員と二人きりなんて、緊張するじゃないか」

 お前とはいえってなんだ? と思いながらも、
「そ、そうなんですか?」
と訊く。

 いつも何事にも動じてないように見えるんですが。
 
 もしや、大魔王様でも、おじさんたちが言うように、
『いやあ、若い女の子に話しかけられたら、仕事とはいえ、どきどきしちゃうなー』
 みたいな感じなのでしょうか。

 ってことは、ご自分の部下とかいろんな女の人に話しかけられるたび、どきどきしてるとかっ?

「……なに無言になってるんだ」

「いえ、ちょっと瞬時に妄想が駆け巡りまして」
と言うと、どういう意味に受け取ったのか。

「別に此処で襲いかかったりしないぞ」
と言ってくる。

「そ、そうではなくてですね……」
と弁解しようと思っている間に、近すぎるケーキ屋についてしまっていた。







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