好きになれとは言ってない
 




 渡り廊下の途中にある倉庫が一番目立たないかなーと思いながら、日当りのいい渡り廊下をケーキの箱を手に歩いていると、前から小宮が来てしまった。

 目敏く、ケーキの箱に目を止め、
「あ、古賀遥がいいもの持ってる」
と言い出す。

「こっ、小宮さ~んっ」
と言うと、

「あっ、名前覚えた」
と笑う。

「あのっ、こ、これは大事な新海課長に買ってもらったご褒美なのでっ」
とケーキの箱を抱いて言い訳をしようとしたが、小宮は、

「へー、その『大事な』は何処にかかってるの?」
と言ってくる。

「え?
 ご褒美ですよ」
とすぐに言うと、

「……わかった。
 色気の無い古賀遥。

 一口くれたら許そう」
と言ってきた。

 何故、今の一言で色気がないと判断されてしまったのだろう、といぶかしがりながらも、仕方なく、二人で倉庫に入る。





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