好きになれとは言ってない
 遥が笑い、
「真尋さんのナポリタンはそんなことないですよ」
と言うと、

「兄貴のを一口もらったから、美味しかったんじゃない?」
とからかうように言われる。

「そっ、そんなことはないですっ」
と手を振ったが、視線はちら、と外を見ていた。

 まだ、航の仕事が終わる時間ではないと知りながら。

 あっ、そうだ。
 お母さんにご飯いらないって、連絡しなくちゃ、とメールを打っていて、迷う。

『友だちとご飯食べて帰る』

 一人なのだが、一人で食べて帰るとか言うと、びっくりされるだろうな、と思っていた。

 今まで、そんなこと一度もなかったからだ。

 一人で外で食べるのは苦手だ。

 でも、此処なら、真尋さんが居るし、それに……とまた後ろを振り返ってしまう。

 だが、そこには街灯の少ない真っ暗な住宅街があるだけだった。




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