好きになれとは言ってない
「閉店まで居たら、送っていってあげるよ」
遥がナポリタンを食べ終わりかけたとき、真尋がそう言ってきた。
「えっ?
いえ、大丈夫です」
「家も覚えてるしね。
一人で帰らせて遥かちゃんになにかあったら、兄貴に怒られるから」
「いえあの、私、ほんとに大魔……課長とは……」
「なに、『だいま』って」
うっ。
「い、言えませんっ」
弟さんに、大事なおにいさんが、会社では、大魔王様と呼ばれてますよーとは言えないよなー、と思っていたのだが、真尋は、
「どうせあの人、会社では、大魔王とか呼ばれてんじゃないの?」
と皿を食洗機に入れながら、言ってくる。
「えっ、なんでですかっ?」
と言うと、顔を上げ、
「あ、図星?」
と笑う。
「いや、そういう人だから。
俺は子どもの頃、大魔神って呼んでたけど」
と言うので笑ってしまった。
「大魔神って、なにか守ってくれそうですよね」
「そうだね。
守ってくれてたとは思うよ。
遥ちゃんのこともそうじゃない?」