好きになれとは言ってない
 なにか課長の方は鮮やかさが足りないような、と気がついた。

「……ニンジンがない」

「そう。
 正解ー。

 兄貴、ニンジンが嫌いなんだよ。

 残されるの嫌だから、兄貴のだけ、最初から入れてないの」
と真尋が言う。

 子どもか、と思っていると、横から航が、
「誰にだって、嫌いなものあるだろう。
 お前にはないのか、古賀遥」
と言ってくる。

 何故、そこで威圧的にフルネーム、と思いながら、
「そりゃありますけどね。
 でも、意外っていうか」
と遥は言った。

「課長は朝起きたら、まず、ミキサーに何本もニンジンを放り込んで、ニンジンジュースを作って飲んで、生卵を何個かジョッキに割って飲んで、走りに行くイメージなんですが」

「生卵を飲んでって、俺は蛇か……」

「そういえば、兄貴、子どもの頃、よく絵本読まされてたよねー。
 お野菜を残さず食べましょう、野菜たちが悲しんでいます、みたいなの」
と笑って真尋が言う。

「それで、本好きになったんですか?」
と言って、

「なるかっ」
と言われてしまった。
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