泥棒じゃありません!
「芦澤ちゃん、今日お昼行ける?」
秀樹にスタンプを送り終えたタイミングで、同じグループの先輩である、大貫悠が私に声をかけてきた。
「いけます……って、もうそんな時間ですか?」
「もうそんな時間ですよー」
悠さんは口を尖らせ私の口調を真似して言うと、私の向かいに視線を移す。
「小川も行けそう?」
「あ、行きます行きます!」
オガちゃんは勢いよく顔を上げ、慌てたように言った。オガちゃんももしかしたら、これを待っていたのかもしれない。
きっかけはなんだったのかもう思い出せないけれど、オガちゃんがこのマーケティング部に配属されてから、ランチはこの三人で、がお決まりになっていた。でも最近は各々が忙しくて、最後に三人で行ってからおそらく半月は経過している。
悠さんはふたつ年上の二十八歳。
悠さんは後輩の面倒見が良くて、いつもこんなふうに昼食や飲みに誘ってくれる。大好きな先輩だ。長女なのかなと思っていたら、上にお兄さんとお姉さんがいる末っ子らしい。
オガちゃんはふたつ年下の二十四歳。
アニオタで、私たちの前ではその手の話もすることがあるけれど、他には絶対話さないようにしていると言っていた。どうやら以前、バイト先でうっかり話して偏見の目で見られたのが、余程トラウマになっているらしい。
食事を終え、食後のほうじ茶を啜っていると、悠さんがはぁと大きくため息をついた。
「午後から仕事したくないなー……」
胸まである、ゆるパーマの髪をかき上げながら、悠さんは本当に嫌そうに言う。
「悠さん、午後一で会議でしたっけ?」
私が訊くと、悠さんは眉間に皺を寄せながら「そう」と答えた。