泥棒じゃありません!
* * *
見慣れた道、見慣れた家々。
こうして元の住処に来るのは、引っ越してから初めてのことだ。
さすがにまだ、懐かしいという気持ちは湧いてこない。むしろ、今住んでいるところよりも風景が自然と目に馴染む。そしてどこかほっとしてしまうことに、嫌気がさす。
心の中は複雑で、自分でもよくわからない。
思い立ったが吉日、とばかりにマンションへ来てはみたものの、これからどうすればいいのだろう。ここまで来てから、やっぱりメグに付き合ってもらえばよかったと後悔する。
勢いでここに来てしまったのは、不安な気持ちを持て余していたから。
写真がまだあの部屋にあるなら、取り返しのつかないことになる前に取り戻したい。
通りすがりにマンション向かいの交番の中を横目でちらりと窺うと、中にはお巡りさんらしき人影があった。ここで不審な行動をとれば、間違いなく声をかけられる。
私は交番の中からは見えない場所で一度立ち止まり、スマホをいじっているふりをしながら考える。
まず、真っ先に確かめなくちゃいけないのは、新しい住人がいるかどうかだ。
私が住んでいた部屋は六階の六〇三号室。下から普通に見上げただけでは、部屋の様子を見ることはできない。
「そう言えば……」
ふと、道路を挟んだ向かい側にこのマンションと同じぐらいの高さのビルがあることを思い出した。