泥棒じゃありません!
「……ここが、少し前まで友人の家だったんで」
「友達の?」
「……はい」
結局、蓮見さんに嘘をつくことになってしまった。
心苦しいけれど致し方ない、と自分に言い聞かせる。
「不動産屋には『鍵は交換済みです』って言われたんだけどなぁ」
「私もまさか、本当に開くとは思わなくて……」
蓮見さんはまたため息をこぼした。
「あのなー……合鍵持ってたとしても使うか? 常識的に考えて」
私は「ですよね」と項垂れた。
「で、合鍵を使ってまで、この家でなにを探してたんだよ」
「……写真、を」
「は? 写真?」
トイレで探していたものが写真だなんて、普通は理解できないだろう。蓮見さんは眉根を寄せている。
「友人が……人に見られたら恥ずかしい写真を、引っ越しの時にトイレに置いてきてしまったというので」
「それで、友達のためにお前がひとりでここに探しに来たっていうのか?」
「はい」と返答できるまで、少し時間がかかった。
「リスクを冒してまで?」
「……はい」
どれだけお人好しなんだよ、と自分で作り上げた話に呆れかえる。
仕方なくついた嘘が、自分をいい人に見せるための嘘になりそうでなおさら心苦しくなる。
でも、今さら引き返せない。
「……芦澤。事の重大さをわかってるか?」
私は目を伏せたままで、なにも言わなかった。
というより、言えなかった。
「もっと違う方法もあったよな?」
「一刻も早く取り戻したくて……あ、いえ、友人が取り戻したいと、そう言っていて」
「じゃ、なんでその友達はここにいないんだよ」
お前はバカだと、暗に言われている気がする。
「軽率と言うか……先のことをきちんと見通せないのは相変わらずだな」
蓮見さんは長いため息をついてから、そう言った。
「甘いんだよ、芦澤は」
私は項垂れたままで小さく頷くことしかできなかった。