不安の滓
 妻が完全に忘れてしまっているだけなのかもしれない。
 万が一こちらの勘違いだったとすれば、電話で宅配員を責め立ててみてもまるで無意味だ。電話をかけてきてくれた宅配員に、とりあえず礼を言って電話を切った。

 俺にせよ、妻にせよ。
 どちらもやや忘れっぽいところがある。

 これまでだって、買っておいたものを忘れていて冷蔵庫の中の物を腐らせたり、レンタルビデオを返し忘れて延滞金を取られてしまったりと。
 物忘れに関するエピソードなら事欠かないような似たもの夫婦なのだ。

 今回のことにしても、荷物が届いたのは二週間も前の話なのだ、忘れているという可能性は極めて高い。
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