恋はたい焼き戦争


「あーー間に…あった…」





とりあえず急いで着替えてから全速力で走って戻ってきた。


本番前にいらない体力使ったな…


少し肩で息をしながら部長の話を聞く。


バトンは自分達で作った看板を使い、渡すときは宣伝をする、という。


そこまでするか?とも思ったけど決まりは決まり。従わなくちゃ。


走る順番ごとに言う台詞をもらう。


4人走るなかの私は最後から2番目だったので


「赤ずきん!!」


と叫ぶ。

赤ずきんの格好をしたやつが赤ずきんって叫ぶのか…それはそれで恥ずかしいな。





「わー、みんな!可愛いね~!」





そんなミーティング中に入ってきたのは





「兄貴!」





昴の兄、匠さんだった。





「鈴ちゃんも~この前と髪形も違って可愛いね」





そう言って優しく頭を撫でてくれる。





「何でいるんだよ?今日は生徒会の会議だって…」

「ん~?早く終わったから来ちゃった☆」





ふふふと笑う匠さん。


対する昴は…あんまり嬉しそうじゃない。


不思議に思っていると誰にも聞こえないような小さな声で





「早く終わったんなら家で休めば良いのに…只でさえ忙しくて寝れてないだろ」





ぼそっと呟く。

案外お兄さん思いなんじゃん、素直じゃないなーと少し昴がかわいく見えた。





「あ、あの!花園高校の生徒会長さん…ですよね!」





そうやっているのもつかの間、匠さんはすぐ女の子たちに囲まれた。





「あ、そうですが…」





ちらっとこっちを見て申し訳なさそうに向こうの方へ歩いていく。


周りの女の子も連れて。





「あ、あれが匠さん…?」





何だかさっき喋っていた感じと大分違っていて人が変わったようで…





「兄貴はああやって色んなとこで頑張ってんだよ。
自分偽って無理に笑顔つくって…」





匠さんの後ろ姿を切なく見つめながら昴が言う。





「俺はそこから逃げてきたんだ。
兄貴を生け贄にして…な」





私は何も返すことができなくて、ただただ時間だけが過ぎていった。


匠さんが離れてから私たちは円陣を作って気合いを入れた。





「よっしゃ、行くぞーー!!!」

「おーーー!!!」





結果は5位。衣装の走りにくさが仇となった。


…まあ、良く考えればそうだよね。


でも評判は凄く良くて、宣伝効果はバッチリ。





「いやーー結局ダメだったね…」





バトンを上手く繋げられなかった昴ともう一度練習をするために少し広いところに来た。


5色対抗リレー、アンカーは昴だ。


私はきちんと、上手に渡さなければならない。





「練習では上手くできるんだけどなーって…え?」





昴がどんどん私の方に近付いてくる。


反射的に後ろに下がってしまう私に昴は





「ちょっと動くな」





と言って彼との距離はもう腕の半分くらい。


そこからまた顔が近付いて息が耳にかかる。


私は変にドキドキしながらも、それが昴に伝わらないように必死で目をつぶって耐える。


肩に指が触れてすぐ距離があく。





「ほら、虫ついてたんだよ」





ははっと笑って手から虫が飛び立つ。


び、びっくりした…


ほっと胸を撫で下ろしてから、ありがとうと伝えると





「…?」





ふと、誰かがこっちを見ている気がした。





「…あかり?」





いたのは2つ結びに私と同じ緑のハチマキをした女の子。


私がそっちを見たと分かると、その子は走っていってしまった。





「え、待って…!」





追いかけようとしたが





「おい、もう一回練習しとこうぜ」





と昴に手を掴まれてしまって行くに行けなかった。

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