ほしの、おうじさま
8階建て自社ビルの5階にある、だだっ広い一室が「宣伝部」フロアで、そのスペース内に宣伝課、広報課、マーケティング課がそれぞれデスクを寄せあい島を作っている。

更に、マーケティング課のエリア内、廊下側から見て一番右端に位置する場所に防音ガラスでできた壁とドアとで隔てられている一角があり、それが『オペレーター室』なのであった。

つまり両スペースの境目はガラス張りになっていて、音は遮断されているけれど室内の様子は外から容易に確認できる。

反対にオペレーター室内から外部の様子を窺う事も。

最初に目にした時、テレビで見た事のある、音楽スタジオとかラジオ局の録音ブースみたいな造りだな、と思った。

精神的に内へ内へと籠ってしまいがちな業務なので、あえて開放的な空間にしたらしい。

また、電話のベルの音とオペレーターさんの声が一日中コンスタントに響き渡る事が予想され、フロア内はもちろんのこと、上下階の社員の集中力を阻害しないようにという配慮で、ビル建築時に、ガラス張り部分だけではなく室内の壁や床や天井にも防音処理を施したらしい。

実際に自分のデスクに居る時や廊下を歩いている時など、オペレーター室からの音は全く漏れ聞こえては来ないので、他の階の人にも何ら影響はないことと思う。

そんな事を考えながら作業を進めていると電話の受信音が室内に鳴り響いた。
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