ほしの、おうじさま
反射的に自分の腕時計に視線を向けると、時刻は9時を数秒過ぎた所であった。

おそらく相手はお問い合わせ窓口の開始時間前から電話を手にスタンバイしており、その時を迎えた瞬間に架電したのだろうな、と推測する。

つまりそれだけの情熱を持って物申したい意見があるという事で、対応する方はプレッシャーだろうと思う。

『どうか頑張って下さい…』と心の中で密かにエールを送りつつ、引き続き渡辺さんの指示のもとルーティンワークをこなしているうちに10時半近くになり、遅番の人達が出勤して来た。

そこで今度は課内の正社員だけのミーティングが行われ、その後、遅番でオペレーター室当番の方に業務を引き継ぎ、私と渡辺さんは部屋を後にした。

つまり早番の当番が8時45分から10時半まで、そこからラストの19時半までは、遅番がオペレーター室内に待機する。

なので実質、オペレーター室業務は遅番がメインで進めて行くという訳だ。


「さて。それじゃあ15分休んでおこうか」


デスクまで戻った所で、渡辺さんが自分の席からそう声を発する。


「きちんと休憩を取って、心身をリフレッシュしておくのも仕事のうちだからね」

「はい」


私がコクリと頷いたのを見届けてから渡辺さんはその場から歩き出し、部屋の出入口へと向かった。

給湯室に飲み物を取りに行くのだろう。
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