ほしの、おうじさま
初日は私も渡辺さんにそこまで案内してもらい、室内設備の使い方やお茶淹れのルールなどあれこれレクチャーしていただいた。

『私は先にトイレに行っておこうっと…』

心の中で呟きながら目的地目指して歩を進める。

用を済ませた後、今度は給湯室へと向かった。

予想はしていたけれど、すでに渡辺さんの姿はない。

私は食器棚に近付くと、中から自分のカップを取り出し、どれを飲もうか思案しながらあちこち視線を配った。

棚の別の段にはお茶っ葉やコーヒーの粉などがストックされていて、その横のカウンターに電子レンジや電気ポットやコーヒーマシン等が置いてあり、更に冷水と、温冷両方選べる烏龍茶と紅茶がボタン一つで出て来る給茶機などが設置されていて、どれでも好きな物をセルフサービスで淹れて良いシステムだった。

給湯室は各階に一ヶ所ずつ存在し、言わずもがなで通常は自分が働いているフロアの当該設備を利用するのがルールである。

そして、それぞれの部署で勤務している派遣社員さんももちろん利用可であった。

「正社員」と「派遣」との待遇にあからさまに差をつける企業もあるみたいだけど、「自社の社員だけでは手が足りないから派遣さんの力をお借りしている訳で、社内設備の利用に関しては同じ権利を有するのが当然だろう」と上層部は考えているようだ。
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