ほしの、おうじさま
「と、いけない。そろそろ戻らないと」

すると星野君はチラッと腕時計を確認し、そう呟く。

「じゃ、僕はこれで。お互いに仕事頑張ろうね」

「あ、うん…」

私と阿久津君を順に見ながら星野君は素敵な言葉と笑顔を残し、来た時同様、颯爽と給湯室から去って行った。

……ああ…。

行ってしまった…。

「……またダダ漏れだったんですけど」

あのタイミングで現れた事をちょっぴり恨めしく思いながら、食器棚からカップとコーヒーの瓶を取り出し、カウンター前へと移動していた阿久津君を見上げ、私は物申した。

「星野君への嫌悪感丸出しの心の声が。何でただ社内で遭遇しただけで『げ』だなんて思うのよ。いい加減自重したら?」

「は?」

右隣に佇む私に鋭い視線を向けつつ、阿久津君は答えた。

「そんなの自由自在にコントロールできる訳ないだろ。ついつい迸る感情なんだから。前にも説明したよな?」

疑問系で返されたけれど私は無言のまま顔を前に戻し、ポーションミルクとスティックシュガーをカップに投入した。
そして流し台の前へと移動し、水切りカゴにくっついているケースの中に入っていたマドラーを取り出し、中身をグルグルとかき混ぜる。
そしてすぐさまそれを流しで洗った。
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