ほしの、おうじさま
言葉を繋ぎながら伊藤さんはサッとカウンターに近付き件のブツを手に取った。


「最初にこれを見つけた人が処理する決まりになっているので、洗い物を始める前にチェックして下さい。もし無ければ、すでに誰かが洗って片付けてくれたという事ですから」

「はい」


朝にスプーンを準備する時と同じ考え方なんだな、と思いつつ返答する。

伊藤さんは手にしていた急須はひとまずトレーの上に、カップとスプーンは桶の中に浸し、仕切り直すように解説を進めた。


「で、こうして準備が整いましたら、いよいよ本番です。スポンジに洗剤をつけ、カップを洗い、それを今度は左側の桶へと移します」

「ざっと泡を落とす為の作業ですね。そしてそれを取り出し、この湯沸し器のお湯で改めてしっかりと灌いだあと、ここにある水切りカゴに乗せていく、と」

「私達オペレーターは必ず二人体制ですけど、人数が少ない課は基本的にこれをお一人でやっています。ただし、もし他の課の当番さんとタイミングがかぶった場合は連携プレーに切り替えるんです」

「流しは一つしかないし、そうした方が効率的ですからね」

「そうですよね」


ただぼんやりと話を聞いているように見えてしまったら失礼なので、『ちゃんと真剣に耳を傾けておりますよ』というのをアピールするべく、私はここぞとばかりに頷きつつ同意してみせた。
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