ほしの、おうじさま
カウンター内の端末を落としたり書類等の整理整頓やちょっとした清掃をしたりしても定時の18時までには充分猶予がある為、「遅番」の設定をする必要はないだろうと判断されたようだ。

「で、私と伊藤さんは「お疲れ様です」って言いながらすれ違おうとしたんですけど、その人は通路の真ん中に立ち塞がるようにして私達の社員証をガン見して来たんですよ」

私が脳内であれこれ考えている間にも福田さんは淡々と話を続けていた。

「そしたら「マーケティング課のオペレーターさんなんですよね?」って確認した後、「午前中、ちゃっかりお客様と一緒にエレベーターに乗ってましたけど、普通派遣の立場だったら遠慮するものなんじゃないんですか?」っていきなり詰問して来て」

感情的にならないように、事実を冷静に伝達できるようにと、努めてそのような口調にしているのかもしれない。

「思わず伊藤さんと二人でフリーズしている間に「これからは気を付けた方が良いですよ」って捨て台詞を残してその人は去って行ったんですけどね」

「ホント、なんて返事したら良いのか分からなくて呆然としちゃったわよね」

そこで再び伊藤さんも解説に加わった。

「確かに、過去の派遣先ではロッカーが用意されていないとか、冷蔵庫は使わせてもらえないとかいう事はあったし、それくらいだったらまぁ想定の範囲内というか仕方ないと思うけれど、エレベーターの使用まで制限された事はなかったから」
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