ほしの、おうじさま
「「節電と自身の健康の為に、1、2階くらいの上り下りだったらなるべく階段を使いましょう」っていうのはわりとどこの職場でも推奨されたりしますけど、それは正社員の人にも向けての言葉ですもんね。「派遣《だから》エレベーターを使うな」っていうのはいくらなんでも言われた事はないです」

「しかも更衣室は6階だもんね。さすがにその階数分、階段で移動するのはキツイわ」


苦笑いを浮かべながらの伊藤さんの言葉に福田さんはコクコクと頷き、続けた。


「それにあの日私達、かなりギリギリの時間に社に着いたんですよね。お客様に遠慮して階段を使ってたりしたら遅刻しちゃってたかも。まぁ、そこは余裕を持って出社しなかった自分の責任と言われればそれまでですけど」

「い、いえ。そんな…」


上手いフォローが思い浮かばず、曖昧な感じで呟いてしまった後、ずっと気になっていた事を質問してみた。


「…それであの、お二人にそのように意見した人物というのは…」

「『野崎さん』ていう女性でした。私達も反射的に相手の社員証を確認したから間違いないわ」

「4月以前は見かけなかった人なんだから『新人』っていうのもすぐに分かりましたしね。それに後から、『そういえば新入社員さんが挨拶行脚に来た時に、あの人も居たかも』っていう風に思い出したし」


もうとっくに予想はついていたけれど、伊藤さん福田さんの返答により確証を得られた。
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