ほしの、おうじさま
「え…」

「「派遣さんがエレベーターを使ってはいけない決まりなんてない。正社員との待遇に差異が生じている部分については、人事や直接関わる現場の上司が必要な場面できちんと説明をしている。あなたが勝手に指導するべきことじゃない」って、すんごくキツく叱られちゃって」

伊藤さん達が報告するまでもなく、すでに上へと話が伝わってしまっていたか…。

「でも、大学生の時にアルバイトしてた会社は、派遣やバイトはエレベーターは使用禁止だったんだもの。それが当然だと思ってたんだもの。そういうとこちゃんとしてないと本人達が困ると思って親切心でアドバイスしただけなのに、そんな言い方するなんてひどいと思わない?」

言葉の途中で立ち上がり、私に接近しながら野崎さんはそう問い詰めて来たけれど、正直返事に困ってしまった。
秘書課長さんの言う事は至極尤もだと思うから。
万が一、派遣さんが何か社内の規則をやぶってしまっている場面を目撃したとしても、上の方にご報告してその後の判断は任せるべきだと思う。
入社してまだ一月足らずの新人が、率先して指導する必要などない。

「ほんっとムカつく。何で派遣社員の方が擁護されて、正社員の私が注意を受けなくちゃいけないのよっ」

「そ、そうだったんだ…」

だんだんエキサイトして行く野崎さんの様子に圧倒されながらも、とりあえず何か言葉を返さなければと思い、私は考え考え発言した。
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