ほしの、おうじさま
「え、えと…」

「ってか、野崎さんのやり方もうまいのよね。ちょっとキツめだけど、『でもまぁ冗談の範疇かな?』っていうラインを攻めてたし。でも、星さんの事をチラッと見たら困ったような顔してたし、『本人が嫌がってるのにそのノリを押し付けるのは冗談じゃあ済まされないよな、次に何かあったら一言言おうかな』って思っている間に研修が終わっちゃって」

そこで富樫さんは思いっきり眉尻を下げて続けた。

「当時、ちゃんとかばってあげられなくて、ほんとゴメンね?」

「そ、そんなっ」

私はブンブンと首を左右に振りつつ答えた。

「不満があるなら、それは自分自身で何とかしなくちゃいけなかった事だし…。富樫さんが謝るような事じゃないよ。むしろ、そうやって気にかけてもらえていただけですごくありがたい」

「……そう言ってもらえるなら気が楽だわ」

富樫さんは安堵の表情で言葉を吐き出した。

「…で、そんな風に心に引っ掛かりを覚えていた所にもってきて、つい最近、野崎さんに関するあまりよろしくない評判が耳に入ってきちゃってさ…」

「よろしくない評判?」

「あ。ちょっと場所を移動しようか」

そこで富樫さんは自分が今、どこで何をしているのかを改めて思い出したようで、話を中断し、そう提案して来た。
もうすでに何人かの先輩方が富樫さんと野崎さんのバトルの様子をチラチラと盗み見ながら通り過ぎて行ったので、時すでに遅しという感じもするけれど、話の流れ的に、更に人には聞かれたく内容を口にするつもりなのだろう。
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