ほしの、おうじさま
「そういう決まりなんだから仕方ないだろ。良いから、早く取って来いよ」

「う、うん」


速攻マーケティング課に引き返し、急いでカップを集めて給湯室に戻ると、阿久津君は洗い物の真っ最中であった。

私の気配に気付いたのか、チラッとこちらに視線を向けた後すぐに前に向き直り、声を発する。


「そのトレイはこっちに置け。そんでお前はこの洗い終わったカップを濯いでカゴに乗せて行け」

「は、はい」


顔だけ動かしてそう言い、文字通り『顎でこき使う』感がハンパなかったけれど、指示の内容自体は間違いではないのでその通りに行動した。


「…何か、阿久津君てすごく手際が良いよね」


さっさかカップを洗い終え、今度は水切りカゴの前に移動して布巾で水気を拭き取りながらトレイに乗せて行き、ある程度溜まった所でそれを手に食器棚へと移動した阿久津君に向けて、私はそう感想を述べた。


「自分自身が迅速に動くのはもちろんのこと、相手への指示も的確だし。『誰かと何かの作業を分担してこなす』っていうシチュエーションに慣れてるんだろうね。そういうとこ、やっぱ小さい時から団体行動で揉まれまくって来た体育会系なんだな~と思う」

「は?何だよいきなり」

「しかもその過程で何度も部長を務めたんだもんね。だからこそ不思議なんだけど…」
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