ほしの、おうじさま
訝しげな表情で問いかけられたけれどそれはスルーし、ちょうど濯ぎ作業を終えた私は給湯器を止めて更に質問を重ねた。

「そんな風に、その気になれば人との和を大切にできて、リーダーシップも遺憾なく発揮できるっていうのに、なんで研修期間中はあんなに頑なに一匹狼を貫いてたの?」

「いや…。別に、『頑なに貫いて』なんかいねーよ。特別話題がないから話さなかっただけだし、わざわざ誰かと一緒に行動する必要がないから一人でとっとと動いていただけで」

運んだカップをすべて棚に納め、再び水切りカゴの前へと戻りながら阿久津君は言葉を繋いだ。

「必要な場面では周りとちゃんとコミュニケーションを取ってたぞ。研修を進める上で、何ら支障はなかったハズ」

「それはそうだけど…。でも、普通はもうちょっと周りとの関わりを持とうと努力するものなんじゃないの?後々の事を考えたら、同期とは良好な関係性を築いておいた方が良いんだし」

「『努力』なんかしなくたってフィーリングが合う奴とは自然と仲良くなれるし、もしそうならなかったとしても、何ら不都合な事はねーだろ」

拭き取り作業を再開しながら阿久津君はクールに言い放った。

「俺達はここに仕事をする為に来てんだから。お友達作りが目的じゃねーんだぞ。…っていうか、どうでも良いけどちゃんと手ぇ動かせよ」

「あ、はい」
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