ほしの、おうじさま
流しの中の桶のお湯を捨て、泡立てたスポンジでなで洗いを始めた所だった。

その後桶に付いている泡をキレイに洗い流し、向きを反対にして流しの中に立て掛けておくのだ。


「私の言動でこの上なくイラつかせてしまったらしく、顔を合わせる度に冷たい態度を取るようになった子がいて…」

「ふーん」

再びトレイを手に、食器棚の前へと移動していた阿久津君は問いかけて来た。


「もしかしてその相手って、野崎とかいう女のことか?」

「え!?」


桶の処理を終え、これまでに使用した布巾を漂白すべく回収し始めていた私は、それを固く握り締め、勢い良く振り向いた。


「な、なんで分かったのっ?まさか阿久津君も私の心の声が聞こえるとか!?」

「んな訳ねーだろ」


クールにバッサリと私の発言を切り捨ててから、阿久津君は解説した。


「お前みたいなトロくさい人種と相容れない、我が強くて率先してトラブルを起こしそうな同期って言ったら、アイツくらいしか思い浮かばねーから。あの女の事はファーストコンタクトの時から警戒してたんだよな」

「……警戒?」


私への評価に大いに引っ掛かりはしたものの、ひとまずそれに対しての突っ込みは我慢して問いかけた。


「ああ。初っぱなから馴れ馴れしく、グイグイと来られたから『何だコイツ』と思ってさ」
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