ほしの、おうじさま
「じゃあ、今日から二人は晴れて恋人同士って訳か」

「あ、ううん。それはまだだよ」

私は急いで訂正した。

「じっくり考えてから答えを出してって言われてるから」

「は?何でだよ」

「え?何が?」

「そんなの考えるまでもなく、「こちらこそよろしくお願いします」って速攻了承すべき流れじゃねーのか?」

「……だよね」

あれ?

今さらながらにその事実に気が付き、私は大いに戸惑った。
ホント、何でだろ?
何で私、星野君への返事を保留にしてしまったんだろ?

「あ。ちょっと場所を移そうぜ」

すると阿久津君は突然そう提案した。

「これから帰宅ラッシュだし、こんなとこで立ち話してたら社内の誰かに目撃される確率が高い。そんで、あらぬ誤解を与えちまうかもしれないし」

「そ、そうだね」

「あそこにするか」

阿久津くんは言いながら歩き出し、進行方向数メートル先にあった公園へと足を踏み入れた。
当然私もそれに倣う。
遊具はなく、様々な植物が植えられ、小さいあずまやがいくつか点々と建てられている、都会のオアシス的な公園。
阿久津君はその中の一番手前にあるあずまやまで近付き、立ち止まると、後を付いて来ていた私と対峙した。
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