ほしの、おうじさま
「いってー!」

「あ、阿久津君っ」

「ったく、何なんだよお前はっ」

私はオロオロしながら阿久津君に声をかけたけれど、それには反応せず、彼は右手で脛を擦りながら野崎さんに向けて抗議した。

「何をいきなり一人で勝手にキレてんだよ!」

「だ、だって、あなた達が悪いんじゃない!」

若干怯みながらも野崎さんは反論した。

「こんなとこで密会なんかして…。私が一生懸命話しかけた時は心底めんどくさそうに受け答えしてたくせに、何で星さんとはそんなに仲睦まじいのよっ」

「はぁ?」

「の、野崎さん、それは勘違いにも程があるというもので…」

「私にもそうしてよ!」

間違いを正そうと繰り出した私の言葉は完全にスルーされ、阿久津君にロックオン状態で彼女は続けた。

「こんな子と話す暇があるんだったら、私とその時間を設けてよっ」

「お前こそいい加減にしろよな」

阿久津君はそれまでよりいっそう低い、ドスのきいた声でそう返した。

「なんでそんなことお前に指図されなくちゃいけないんだよ。「誰々さんと口をきくな」だの「あの子じゃなくて私と仲良くしろ」だの、お前は小学生か?」

怒りの感情がマックスになった事がアリアリと窺える声音だった。
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