ほしの、おうじさま
そもそも内装がとてもコジャレてて、洗面台の奥にはデパート内によく設けられているようなパウダールームまである。
まさしく「化粧室」なのだった。
といっても、パウダールームが併設されているのはこの会議室フロアと一つ上の重役室フロア、そして一階と、外部のお客様が利用する可能性が高い階にあるトイレだけらしいけど。
それでもやっぱりすごいよなーとしみじみ思う。

「お疲れ様」

『さすが天下の0to0』なんて感心しながら水栓の下に手をかざしていると、右側に居た女性にそう声をかけられた。
これまたリクルートな出で立ちから、同じ新入社員である事は一目瞭然。
それに、朝から行動を共にしているのだから、何となく顔にも見覚えがあった。
ワンレンのショートボブで、160半ばと思われる背丈の、とてもキリッとした女性。

「あ、お疲れ様です」

私は流れ落ちる水の中で手をこすり合わせつつ返答した。

「えっと、星さん、だったよね?私のこと覚えてるかな?」

「え?」

「一次面接で星野君と同じグループだった…」

「あ!」

そう言われた瞬間に、あの日あの時の記憶が瞬時に蘇った。

『ご両親の愛が込められたとても良い名前』

エレベーター内で私の後に、確かそう発言していた女性。
私は手に付いた水滴を振り落とし、ポケットからハンカチを取り出しつつ興奮気味に言葉を繋いだ。
< 39 / 241 >

この作品をシェア

pagetop