ほしの、おうじさま
心底羨ましく思いつつも、特別これといって用もないのにその輪の中に入って行き、会話に加わる勇気はなく、視線は向けずに耳だけでその様子を探っている根暗な私なのであった。
つくづく席が離れてしまったことが超絶に口惜しい。
私の事だから隣同士になったとしてもきっと自分から気の利いた会話なんかしかけたりはできないだろうけど、それでも今よりは話せるチャンスはあった筈。
実際に、何気に視線を向けた際、向井さんが星野君と和やかに語らっている姿を何度か目撃したし。
まぁ、彼女の対人スキルだからこそ成せる技なのだろうけど、とにかく物理的に近くに居れば、この私でも今よりは確実に星野君と接する機会に見舞われていた筈なのだ。

「えー。でも、阿久津君てちょっと恐くない?」

なんて考えている間に他の女子がそう発言した。

「話しかけても単語でしか答えが返って来ないし、加えてあの無愛想さだし。まだまだ若いくせに、無駄に頑固親父の雰囲気出まくりなんだもん」

「いやいや、そこが良いんじゃないのー」

すかさず野崎さんが反論した。

「群れるのを嫌う、クールな一匹狼って感じでさ」

「うんうん。今時珍しく硬派だし、チョー渋いよね」

阿久津くん支持者達の中でも一番熱量がある野崎さんのその様子に私は更に驚かされた。
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