ほしの、おうじさま
「当日、何らかの災害が発生したという放送が流れますので、仕事の手を止め、各部署の責任者の指示に従って避難を開始して下さい」

「あの~、すみません」

するとそこで男性社員の染谷君が手を上げつつ質問した。

「ちょうどその時、トイレに入っていたりした場合はどうすれば良いんでしょうか?」

「速やかに用を済ませ、そのまま階段室に直行してもらって構いません。自分の部署にわざわざ戻る必要はありませんので」

「速やかに用を」という部分で控えめな笑いが起きたけど、課長は表情を変えずに淡々と続けた。

「そして一階ロビーにて同部署の人と合流して下さい。すぐさま点呼が開始されますので、その際に自分の存在をきちんとアピールしてもらえれば大丈夫です。トイレに限らず、たとえば喫煙室や給湯室、休憩コーナー等に居た場合にも同じ事が言えます。とにかくすぐさまそれまでの行為を中断し、階段室へと移動し、一階ロビーを目指して下さい」

「分かりました。ありがとうございます」

染谷君が答え、私達も頷いた所で室内にノックの音が鳴り響いた。

「はい、どうぞ」

「失礼します…」

静かにドアが開かれ、顔を出した女性社員が、そこから課長に向かって声を発する。

「お話中すみません。DDCの担当の方がいらっしゃったのですが」

「え?お約束は15時半でしたよね?」
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