ほしの、おうじさま
「皆さんはこのまま午後の休憩に入って下さい」

「え?よろしいんですか?」

「はい。完全にこちらの都合でそうなったのですから、好きなように過ごして下さって構いませんので。さすがに社外に出るのは控えていただきたいですが」


思わず、という感じで発せられた加藤さんの問いかけに課長はそう答え、続けた。


「当初の予定通り、15時半になりましたら庶務課の係長が来て下さる筈ですので、それまでには席に着いていて下さいね」

「はい」

「それではまた」


私達の返事を受け、課長はそう口にしながら足早に室内を横切り、出入口へと向かうと、素早くドアを開閉して出て行った。


「ラッキー。30分以上も休めるじゃん」


野崎さんがこちらに視線を向けながら上機嫌に言葉を発する。


「そ、そうだね」

「外にさえ出なければ自由に過ごして良いって言ってたよね?それならちょっと社食を覗いて来ようかな。あそこのデザート、すっごく興味があるし」

「あ、私も行きたい!」


そこですかさず富樫さんが反応した。


「加藤さんが言ってたもんね。ランチを過ぎると全品安くなるって」

「そうそう!」


富樫さんの問い掛けに、野崎さんは彼女と同じくテンション高めに返答した。

その会話で私も『ああ、今日話に出たばかりのアレのことか』と思い至る。
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